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「過去の経験が今を創る」サガコンサルティング代表アンソニー・グリフィンさんの学びと決断

リモートワーク、時短営業、副業…e.t.c. 多様化する現代のワークライフバランス。“新しい働き方”を考えるべく、様々な起業家やビジネスパーソンにキャリアを聞く連載【After/Withコロナ 多様化する新時代の働き方】。


第3回目はサガコンサルティングのアンソニー・グリフィンさんにお話を伺いました。

ゲーム開発会社、英会話教室、カリフォルニア州のリバーサイド市の職員など様々なキャリアを歩んで来たアンソニーさん。現在はサガコンサルティングの代表として企業のグローバル進出をサポートしている。そんな彼にも「起業はしたいと考えていたものの、どのような会社を立ち上げるべきか分からなかった」という時期があったという。今回はアンソニーさんのキャリアと今後の目標ついてオンラインインタビューしました。


自分の書いたものが30万人の市民に読まれると思うとワクワクしましたね



――どのような会社で社会人としてのキャリアをスタートさせましたか?


大学卒業後、アクティビジョンというサンタモニカにあるゲーム開発の会社でキャリアをスタートし、カスタマーサービスとゲーム開発を行なっていました。ゲームそのものよりもゲーム産業に興味があったんです。成長していくスピードや目新しさに惹かれましたね。



――その後はMBAを取得するために大学院に行かれたんですよね。


そうなんです。自分で会社を起こすことに興味があったので、そのためにはより様々な知識や経験が必要だと感じて。なので、一度会社を辞めてマネジメントやIT、マーケティング、起業家精神について学ぶために学校へ戻ることを決めました。





――MBAを取得後は一般企業に戻ったのですか?


いいえ。次はカリフォルニア州リバーサイド市の職員として働き始めました。マーケティングアシスタントとして、プロジェクトの管理をしたり、市のイベントの案内を書いたり、市の広告を書いたり。マーケッターの仕事と同時にライティングの仕事もしていました。自分の書いたものが30万人の市民に読まれると思うとワクワクしましたね。当時はデジタルマーケティングの黎明期だったので、私の書いた文章はデジタルではなく印刷され、市民に配布されていました。デジタルとは違い修正が難しいので、誤字・脱字、正しい用語の使い方など完璧に書くことが重要だったんです。大変でしたがスタイルガイドを読みながら試行錯誤して書いていました。



※スタイルガイド:出版物などの統一した表現を規定するガイド。



――仕事をする上で学んだことはなんですか?


いかにして低いコストで仕事をするかということですね。マーケッターと同時に政府の役人でもあったので、予算が厳しくて。なので、少ない予算内での工夫の仕方を学びました。



――一般の会社と役所の仕事では仕様が違ってくると思います。一番大変だったことはなんですか?


根回しですね(笑)。日本の文化だと思っている人も多いと思いますが、実はアメリカにもあるんですよ。大きな組織では多くの人の賛成が必要なので、スムーズに物事が運ぶように根回しするのは大事。政府の仕事と日本の大企業での働き方は少し似ているかもしれません。



苦労した日本語学習 恩師のおかげでクラス内では成績トップに



――リバーサイド市の職員を経て、日本に来たんですよね。もともと日本で働きたいと思っていたんですか?


いいえ。日本が好きでしたが、働きたいとは思っていませんでした。



――日本のなにが好きだったのですか?


日本の製品です。1980〜90年代、日本でいうバブル時代の頃に子供だった私は、日本の高品質なものやカッコイイものに囲まれて育ちました。子供の頃はファミリーコンピュータやメガドライブで遊び、成長するにつれ家電や車を使うようになりました。大学生の頃は三菱の車に乗っていましたよ。そのような環境の中で、日本語を勉強して話してみようと思いました。



――日本語はいつから勉強し始めたのですか?


大学生の頃からです。1年間外国語を学ぶシステムがあったので、日本語を選択し勉強し始めました。最初は難しくて「無理かもしれない」と思っていたのですが、当時の日本語教師であるよしこ・ヘインさんが励ましてくれたので、なんとか頑張ることができましたね。日本語とともに面白おかしく、日本の生活について教えてくれたのが印象に残っています。先生のおかげもあり、最終的にはクラスのトップの成績を収めることができました。



――大学での経験がきっかけで働きたいと思うようになったのですか?




いいえ。その頃は強い興味はあったのですが、働きたいとまでは思っていませんでした。しかし、その後日本に訪れてみて、実際に住んでみたいと本気で思うようになりましたね。





――初の来日はいつですか?


2007年ですね。リバーサイド市の職員として働いている頃です。公務員はしっかり休みが取れるので、休みを利用して計2回の日本観光。その後、ビジネスの中心地である東京の新宿に移住しようと決意しました。



日本で働くうちにみえてきた 日本のビジネスマンの課題とは



――来日してすぐにサガコンサルティングを立ち上げたんですか?


まさか!(笑)いきなり日本に来て起業するのは難しいので、まずは英会話教室の先生として働き始めました。ビジネスマンに対して英語だけでなく、自分のビジネスの経験、面接の仕方、プレゼンテーション方法なども教えました。教えると同時にコネクション、日本のビジネストレーニングについても学ぶことができましたね。



――何年間働いたのですか?


6年間です。2年間は英会話教師として、4年間は本社で働きました。本社では日本の企業の社長や幹部、新しく本社に配属になった人のトレーニング、どのようにSNSを運営したらいいかなど企業のマーケティングサポートなどを行っていました。



――その後に起業したんですか?


いいえ、会社を辞めて2年間は在日米国商工会議所でマーケティングの仕事をしました。当時は起業はしたいと考えていたものの、どのような会社を立ち上げるべきか分からなかったんですよ。




――起業の構想を立てるきっかけはなんですか?


アメリカでのキャリア、英会話教室や商工会議所などでの経験です。働くうちに、海外進出をしたい日本のビジネスマンが抱えている課題が見えてきて、自分ならこの問題を解決できると思ったんです。組織に属して問題を解決するのではなく、個人事業主として直接問題を解決する方が効果的だと考えてサガコンサルティングを立ち上げることにしました。



将来的には顧客がどこでも学べるシステムを導入していきたい


――サガコンサルティングではどのようなことを行なっているのですか?


主に海外進出を狙っている日本企業のサポートです。コンテンツマーケティングやSNSの使い方、プレゼンテーションの仕方やプロジェクトマネジメントなどクライアントが必要なグローバルスキルまで幅広くサポートしています。



――今後行っていきたいことはなんですか?


ビジネスの一部をシステム化、プロダクト化することです。個人事業主は体力も時間も大きな企業に比べて限りがあるので、一部をオンラインコンテンツにし、マンツーマンでなくてもサービスを提供できるシステムを作ることが目標。顧客がどこでも学べるシステムを導入していきたいですね。



――どんなコンテンツを想定していますか?


例えば、SNSの運用の仕方ですね。外国でビジネスをするにはLinked Inのアカウントを持っていた方が有利なのですが、実際にどのような使い方をすればいいか分かっていない人が多いんですよ。プロフィール文、写真など最適なコンテンツを作成するためのアドバイスを配信したいです。





――会社を立ち上げて良かったことはなんですか?


クライアントも自分も早いスピードで成長できることです。クライアントのビジネスを直接サポートするので、フィードバックが貰えますよね。提案した内容が効果的だったか、そうでないかがしっかり結果としてわかるんですよ。楽しくもあり、大変でもあります。まさに二度目のMBAのようですね。MBAも様々なことをスピーディーに吸収したので。



 

編集後記:異国でビジネスを立ち上げるというのは想像以上に大変なこと。アンソニーさんの特異な点はその行動力だと思いました。「一度社会に出ても学びが必要だと感じたら学び直す」「思い切って日本に移住する」など勇気ある決断をできる彼だからこそ、ビジネスを成功させ多くのクライアントに信頼されているのでしょう。


ライター:井上紗希


 


〈アンソニー・グリフィン〉アメリカのカリフォルニア州生まれ。カリフォルニア大学リバーサイド校を卒業し、ゲーム開発会社でキャリアをスタート。退職後の2006年にMBAを取得。その後、リバーサイド市の職員として年間250を超えるプロジェクトのマネジメントを手がける。2009年に来日。2017年にサガコンサルティングを立ち上げ、企業のグローバル進出に様々な角度からアプローチしている。



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