リモートワーク、時短営業、副業…e.t.c. 多様化する現代のワークライフバランス。その中で「自分らしい働き方とはなんだろう」という悩みは、誰もが一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
“新しい働き方”を考えるべく、様々な起業家やビジネスパーソンにキャリアを聞く連載がスタート。
【After/Withコロナ 多様化する新時代の働き方】
第2回目は神奈川県川崎市で日本酒専門店「酒縁 さらしな」を営むオーナーの手塚 晶之さんにお話を伺いました。
1954年に祖父が創業した老舗蕎麦屋の三代目として厨房に立つ手塚 晶之さん。コロナショックの中で始めたという”オンライン仮想店舗”は常連だけでなく新規のお客さんにも好評だという。今回は手塚さんのキャリアと仮想店舗での取り組みについてオンラインインタビューしました。
修行は苦労の連続 一番辛かったのは体力面
――料理の道に進むと決めた経緯を教えてください。
父親が1954年から続く蕎麦屋のオーナーをしていて、幼い頃から、店には顔を出すような生活をしていました。幼少期から高校生まで親がやる仕事を見ていて、漠然と料理の道に進むんだろうなと思っていたんです。抵抗はなく、自然とその道に進みましたね。
――料理はどのように学びましたか?
調理師学校に通って学びました。2年間通うと、国家試験なしで調理師免許が取れるんですよ。それまで包丁も握ったことがなかったので、最初のうちは何度も怪我をしました。恐怖心もあったのですが、練習するうちに徐々になくなりましたね。同じ道を目指す友達もできたので、通ってよかったなと思っています。
――卒業後はそのままお店を継いだのですか?
いいえ、手打ちの技術を学びたかったので蕎麦の銘店『本むら庵』で修行させてもらいました。荻窪の本店で2年半、六本木店で2年、最後に本店に戻り合計で5年の修行。初めて、蕎麦を打ったときはもうボロクソでした(笑)。『本むら庵』で使っているそば粉は、粒子が非常に大きいのでくっつきにくいんですよね。本当に難しくて。でも、難しい技術を学んだ分、今に生かされているなと思います。
――なぜ修行の道を選んだのですか?
修行できなかった親父の代わりに、自分が外を見に行くという目的があったからです。
先先代が早くに亡くなり、親父は店を継がなくてはいけなくなってしまったのですが、当時まだ中学2年生。修行する間も無く店を継いだので、外の技術や飲食店が分からない状態だったんです。
――修行では苦労などしましたか?
始めたときは、苦労ばかりでした。正直、何度も辞めたいと思いましたね。初めて社会に出たことによるストレス、先輩に囲まれての寮生活など、苦しいと思う時期が何度もありました。中でも、一番きつかったのが体力的な面ですね。忙しいお店だったので、体はもちろん頭も使って、とにかく疲れていましたね。
――飲食業界はハードな仕事ですよね。
はい。でも修行を終えてからも、たくさん苦労しました。
修行で覚えてきたことを実践したい自分と長年味を守ってきた親父とで親子ゲンカに発展することが度々ありました。今だから笑えるけど、当時はよくぶつかりましたね。間に立ったお袋には苦労をかけました。
僕は修行の成果を見せたいと思っていたので、新しいことを取り入れたかったんです。例えばつまみや店のシステム、ネギの切り方など。
今思うとくだらない親子ゲンカでしたけど、親父にはプライドや意地もありますからね。
ー酒縁さらしな 手塚晶之(てづか まさゆき)さんー ――どうやってその状況を打開したのですか?
僕は自己中なところもあるので、とにかくやっちゃうんです(笑)。そうすると、仕方ないと親父が折れて。そんなふうにして徐々に変化しつつ、親子間の揉め事も解決していきました。
今年の1月に新しい事業形態に。日本酒専門店に改装
――日本酒専門店に改装しようと思ったのはいつ頃なんですか?
去年の夏終わりですね。ジャンルに特化したお店にステップアップしたいと、日本酒とお蕎麦の専門店を構想し始めました。改装して今年の1月に新しい事業形態になりました。
――もともと日本酒については詳しかったんですか?
好きだったのですが、そんなこともなくて。5、6年前に日本酒を本格的に学び始めましたね。仕事が休みの日に唎酒師の資格が取得できる講座に通っていたのですが、両立は苦ではなかったです。いくつになっても新しいことを学ぶのは楽しいですよね。
ー改装前の店舗ー ――改装後、客層の変化はありましたか?
若干の変化はありましたね。ですが、手打ち蕎麦のお店でご愛顧いただいたお客さんも引き続き来店してくれていますし、新規のお客さんにもご好評いただいていています。
ー改装後の店舗ー
――その矢先にコロナショックが。
そうなんです。
サービスを向上させて満足度の高いサービスを提供できるように頑張っていこうと思っていた矢先でのこの状況で、店舗での営業は休業に追い込まれてしまいました。
改装費用のこともあり危機的な状況に陥りましたね。
オンライン店舗の営業でピンチをチャンスに
――今はどのような営業をしていますか?
今はオンラインのみで営業です。
おつまみセットを販売し、ご購入して頂いたお客様へオンラインで仮想店舗のご提供をしています。
――仮想店舗とは実際に何をしているんですか?
日本酒会などのホストをしています。
実店舗での営業と同じくお客様とのやりとりを楽しみながら、料理の解説をしたり、肴に合った日本酒をご紹介したり。また、知り合いの飲食店を紹介したりもしています。
やっていく中で、オンラインも一定のニーズがあるなと感じていますね。
遠くにいる人とリアルタイムで映像付きで話せるので、普段飲みに来れない方も参加できるんですよね。実際に、北海道に住んでいる人が気に入ってくれたりして。そういうのがとても嬉しいです。あとは、移動しなくていいのでそのまま寝れるのもいいですよね(笑)
――緊急事態宣言が解除されましたが、今後も続けていきますか?
あと1ヶ月は続ける予定です。宣言が明けても、急にはお客様が来ないと見込んでいるので、ご注文いただいたお客様をターゲットにもう一度購入してもらるような工夫をしていきたいです。
――おつまみセットの内容を教えてください。
左から)きゅうりの糠漬け・昆布のうま煮・蕎麦味噌・焼き鳥・牡蠣の燻製オイル漬け・だし巻き卵・ニシンの甘露煮・鴨ロース煮
※週一回、土曜日の配送。写真のメニューは5月のもの。6月以降はHPにてご確認ください。
一番人気が300gの合鴨ロース煮。合鴨を低温調理したものなのですが、柔らかくてしっとりしていて、かなりご好評いただいています。そのほかにも酒の肴にぴったりな蕎麦味噌、桜チップの香りがする牡蠣の燻製オイル漬け、鰹節の旨味たっぷりなだし巻き卵など、計8点がセットになっています。
――売り上げはどうですか?
実際、厳しいですよ…。
実店舗でできたことの半分しかできていない状態なので。普段ならお酒と料理の売り上げですが、今は料理でしか得られないんですよね。そんな状況ですが「お客さんが喜んでくれるサービスをしていくのが一番」という想いで、耐え忍んで次に繋がる営業を心がけています。
職人にとって一番嬉しいのは、直接お客さんの反応が見れること
――今後のビジョンはありますか?
まずはすぐにでも実店舗での営業をしたいですね。最近は足を運んで頂いたことのあるお客様に新メニューの情報をお届けするなど、お客さんの気持ちを掴めるような新しい施策にも力を入れています。
ー日本酒に合う肴セットー
――最後に、お客さんに向けてのメッセージをお願いします。
実際に店舗に来て食べてもらい、お客さんの反応を見ることができるのが職人にとっては一番の喜びです。食べてもらったお客さんには笑顔になってもらえるようなサービスを、常に目指していきたいです。
編集後記:リニューアル構想中、唎酒師の資格を取るためにスクールに通っていたという手塚さん。「仕事との両立は苦ではないのか?」と問うと「いくつになっても学ぶことは楽しい」と答えてくれたのが印象的でした。何事も意欲的に、前向きに捉える手塚さんだからこそ今回のコロナショックの中でも、新しい発想で前向きに行動し続けることができるのだと感じました。まだまだ挑戦は始まったばかり、今後の動きにも注目していきたいです。
ライター:井上紗希
〈手塚晶之〉1982年生まれ、神奈川県登戸出身。東京調理師専門学校卒業で学んだのち、荻窪の名店『本むら庵』で5年間の修行に励む。その後、祖父が1954年に開業した『生そば更科』を『手打ちそば更科』と改名し父の後を継ぐ。2020年に日本酒専門店『酒縁さらしな』にリニューアルし、実店舗のみならずオンラインでの仮想店舗の取り組みも積極的に行なっている。
酒縁 さらしな 神奈川県川崎市多摩区登戸3402 044-911-2505
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